火曜日, 11月 12, 2013

美食日記「レフェルヴェソンス」(西麻布)


“レフェルヴェソンス”とは泡が弾けるという意味で、ものごとを生み出す、活気が漲るといった意味もあるそうだ。そんな名前とコンセプトがぴったりのレストランが西麻布(高樹町)の閑静な住宅街のなかにある。アクセスとしては地下鉄の六本木、広尾、表参道のちょうど中間ぐらいにあり、どこの駅からも少し歩くので、渋谷から都バスの新橋行き(都01)で「南青山7丁目」で降りるのが無難ではないだろうか。

お店に入ると黒いソファーのあるウエイティング・ルームに案内され、ほんの2〜3分してダイニング・ルームへ。ダイニングルームはとても広く、入って左手の全面ガラス張りの窓の外にはライティングされた樹木があり、その向こうには六本木ヒルズが見えたりする。テーブル間のゆとりは申し分なく、満席でもおそらく隣席の声が気になることはまずないだろう。窓の反対側には3名用(?)の半個室的なブース席もあり、ちょっとした密談(笑)をするにはいいかもしれない。また階下には数名から10名ぐらいまでの個室もあり、内輪のお祝い事などに利用できそうである。

さて、この日のメニューは下記の通り。なんと全13品。

・2種類のグリーンオリーブ
・テット・ド・コション、さつまいも、黒トリュフ、みかんを2口で
・アップルパイ#11〜
  短角牛テール、里芋、コンデを3口で
・焼き鱧とリ・ド・ヴォーのポワレ、
 海老香る甲殻類とジュと冬瓜、ディル、オリーブオイル
・定点〜(写真右上)
  丸ごと火入れした蕪とイタリアンパセリのエミュルション、
  バスク黒豚のジャンポンセック&ブリオッシュ
・秋の悦び〜
  稲藁で燻した戻り鰹、クレームドシャンピニオンと鰯いしる&黒酢のレデュクション、
  辛味大根、ジロール、紫蘇の花
・秋の色#2〜(写真左下)
  フォアグラのナチュラルと珈琲のレデュクション
  バターナッツ南瓜のピュレ、丹波の黒豆、あんず、春菊
・右と左で〜
  金宣烏龍茶
・熊野地鶏の胸肉を炭火で炙って、牛蒡のピュレ、法蓮草、銀杏、むかご、柚子の香り(写真右下)
・厳選チーズ あるいは 時季のお野菜(写真左下)
・栗のブリュレのかけら、ラムレーズンアイスクリーム、山ぶどうのジュレ、オリーブオイルの蒸しパン
・ジンジャーミルクムースとダージリンアイスクリーム、リンゴ寒天と塩漬けレモン
・カフェ・紅茶 ミニャルディーズ

どれもこれも美味しい。美味しさに加えて、シェフの気概というか哲学がどの料理にも注がれている。よく「料理は愛情だ」だと言ったりするが、ここの料理は少し固く感じられるかもしれないが「料理は哲学だ」という気がする。つまり、どの料理にしてもシェフがこれまで料理人として培ってきた経験とアイデア、そして一人の人間としてのポリシーが気持ちとなって表されている。

最初の3品は食感と遊び心を楽しむ料理で3品目のアップルパイは某ファーストフードで売られているアップルパイを再現したものでシェフの童心の思いが込められている。

4品目から7品目は前半のメインディッシュ。「焼き鱧」は香ばしい食感で飲兵衛にとっては贅沢な一品で言うことなし。「定点〜」の蕪料理はシェフのスペシャリテで、60度で4時間かけて調理したものだそうで、繊維質を残しながらもほんのり甘みのある味わいは絶妙。蕪に対する概念を根本から覆された気持ちになった。次の「秋の悦び〜」はきのこのソースが少し濃い目なのだが、これを鰹につけて食べてみると、鰹の臭みが消えて、逆に脂とうまく融合していき、不思議な味わいを楽しめた。これも飲兵衛には堪らない。「秋の色#2〜」はフォアグラがメインというよりソースという感じで、どの野菜とのコノンビネーションが自分にフィットするか、その組み合わせを楽しむ料理。私はフォアグラを春菊で巻いて少し珈琲をつけて、それをあんずの上に乗せて食べるのが一番美味しかった。(笑)

8品目の「金宣烏龍茶」は箸休めというか休憩といった感じで、1つのカップで2つの金宣烏龍茶の味わいを楽しむことができる。

9品目と10品目が後半のメイン料理。「熊野地鶏の胸肉」は左下から右上に食べていくことによって、炭火の香ばしさと共に地鶏がもつ引き締った味わいをいろいろな風味で堪能するという心ニクい一品である。「時季のお野菜」は写真でも分かるようになんと50種類以上(この日は62種類)の野菜を味わうことができるというもの。全国各地のこだわり野菜農家の人たちが作ったものなので、それはそれは瑞々しく大変美味しく、生産者たちへの感謝の気持ちを持たざるをえなくなる。この料理は「厳選チーズ」との二者択一のメニューだったが、もし食べる機会があれば、ぜひともこちらをチョイスしてもらいたい。生産者の名が連なっているリストが貰えるので。

11品目から13品目まではデザートといった感じであろうか。これらも大変美味しく、最後のミニャルディーズには隠しものが入っていた。

私と同伴者が共に話好きということもあるが、ソムリエ兼マネージャーの大岡洋一さんやシェフの生江史伸さんとはいろいろな話をさせていただいた。そのせいもあって、今回はなんと5時間もかけて料理を堪能することになってしまい、またもやレストラン滞在時間記録を更新してしまった。こうなると、もはや超大作のオペラを観劇したという感じで、前述に書いた「哲学」に加えて「芸術」の領域に入っているのかもしれない。

どうやら私的ミシュランガイド3番目の三ツ星レストランに出会ったようである。トレビア〜ン!  マニフィック! 帰り際にはこの日飲んだワイン(このことについては後日また書く)のラベルをプラスチック・クオーティングしてくれたものを記念にいただいた。メルスィ・ボク。

レフェルヴェソンス
http://leffervescence.jp/

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